2019年12月26日木曜日

日本物理学会 秋季大会で発表 2019年9月12日


量子力学における時間と空間の論理的考察



      東京第一合成㈱      小竹秀典

    Logical Consideration of Time and Space in Quantum Mechanics

            Tokyo Dai-ichi Gosei Co., Ltd.       H. Kotake



物理学史研究の役割の一つは物理学の思想の発展に光を当てることである。このことにより、「法則とは何か」ということについて回答が得られるかもしれない。物理学とは「変化を記録し、予測すること」だということができる。古典力学において、物体の運動を通じて時間と空間(距離)を理解するのは、我々の実生活での経験に直接結びついているので容易である。物事の変化を記述するのは物体の運動を通じて行われているということを理解するのは重要である。古典力学においては、流体や音の波動現象は一般的に媒体の運動として捉えられている。重力のような力の伝搬(作用)現象も、作用された物体の運動として時間と空間(位置)で表現されている。これは電磁気学でも同じで、作用された物体の運動として時間と空間(位置)で表現されている。

目に見えない物体の変化をどう表現するかが問題である。量子力学では変化を直接観測されることは少ないが、変化の結果として観測されるものとしては次のような例がある。

1.      電子の二重スリットの実験から観測される干渉縞がある。いわゆるド・ブ

ロイの物質波で、この縞の間隔から波長λが決まる。すなわち時間と距離が決まる。これには光速度cが前提とされている。

2.      スペクトルの波長からも時間と距離が決まる。

3.      干渉縞や光の強度(存在確率)

時計やものさしで直接時間や距離を測るのではない。観測結果を物質波というモデルを通じて古典力学の運動に対応させているのである。このことで、古典力学で定義された時間と空間(距離)を使うことができるのである。量子力学で観測される現象と古典力学における現象が一般に同居することがないので、量子力学で使われる時間、長さ、運動量、エネルギーと言う言葉が古典力学におけるそれらと同じであるかという疑問を抱くことはないが、それらを疑ってみることも必要ではないだろうか。量子力学の理論がどのような論理の上に成り立っているのか知る上でも役立つものと思われる。