2020年10月1日木曜日

日本物理学会 秋季大会で発表 2020年9月9日

 

ライプニッツとクラークの時空論争を参考にした       物理量の定義と測定に関する考察

 

      東京第一合成㈱      小竹秀典

Consideration about Definition and Measurement of Physical Quantity concerning the Leipniz-Clarke Correspondence

            Tokyo Dai-ichi Gosei Co., Ltd.       H. Kotake

 

1715年ころ行われたライプニッツ-クラーク論争は、時空論の古典のひとつである。それは「物体の存在そのものが時空を形成する」というライプニッツと、「絶対的な時空があって、その中に物体が存在する」というニュートンの考え方の論争である。ニュートンの考え方が物理学では主流であるが、前者の考え方も最近の宇宙論や統一場の議論で見直されているとの意見もある。これらに関しては哲学の分野では内井惣七やコペンハーゲン解釈(世界記述法や量子言語)が論じている。ここでは物理量の定義と測定という視点で整理して考えてみたい。

ライプニッツの考え方によると空間は状態、時間は事象の序列または変化と定義されるが、その測定は基準となる状態または変化現象との比較対照で行われるだろう。ライプニッツに言及したわけではないが、このことは過去数回の発表で示してきた。今でもニュートンの絶対空間と絶対時間による測定(これは絶対空間と絶対時間の定義そのものであるが)がどのようにして行われるのかは明らかではない。やはり基準となる現象と比較して測定するしかないのではないか。それならば運動の法則が成り立つ範囲での時空が絶対空間と絶対時間ということになり、測定ではニュートンもライプニッツも変わらなくなる。一般に定量的な測定は標準サンプルとの比較で行われるが、運動における等速度運動は標準サンプルみたいなものであろう。物理量の定義と測定が不可分なことは重要である。

ライプニッツの考えをもとに量子力学を考える。量子力学では時間と空間は直接測れるものではない。光の波長、粒子の軌跡から導き出される運動量やエネルギーをもとに計算されるものである。そこには原子や原子核のモデル(模型)があり粒子や波動の運動に置き換えられている。モデルは考え方の一つであり仮定である。従って時間と空間で表現されたシュレディンガー方程式の結果と実験との間に矛盾が生じるとモデルが見直される。これは時間と空間の定義が見直されるのと同じである。この種の議論は時空だけでなくすべての物理量に展開できる。

最後に助言を頂いた内海隆行、石川利久、関根優年の各氏に感謝します。



  

2019年12月26日木曜日

日本物理学会 秋季大会で発表 2019年9月12日


量子力学における時間と空間の論理的考察



      東京第一合成㈱      小竹秀典

    Logical Consideration of Time and Space in Quantum Mechanics

            Tokyo Dai-ichi Gosei Co., Ltd.       H. Kotake



物理学史研究の役割の一つは物理学の思想の発展に光を当てることである。このことにより、「法則とは何か」ということについて回答が得られるかもしれない。物理学とは「変化を記録し、予測すること」だということができる。古典力学において、物体の運動を通じて時間と空間(距離)を理解するのは、我々の実生活での経験に直接結びついているので容易である。物事の変化を記述するのは物体の運動を通じて行われているということを理解するのは重要である。古典力学においては、流体や音の波動現象は一般的に媒体の運動として捉えられている。重力のような力の伝搬(作用)現象も、作用された物体の運動として時間と空間(位置)で表現されている。これは電磁気学でも同じで、作用された物体の運動として時間と空間(位置)で表現されている。

目に見えない物体の変化をどう表現するかが問題である。量子力学では変化を直接観測されることは少ないが、変化の結果として観測されるものとしては次のような例がある。

1.      電子の二重スリットの実験から観測される干渉縞がある。いわゆるド・ブ

ロイの物質波で、この縞の間隔から波長λが決まる。すなわち時間と距離が決まる。これには光速度cが前提とされている。

2.      スペクトルの波長からも時間と距離が決まる。

3.      干渉縞や光の強度(存在確率)

時計やものさしで直接時間や距離を測るのではない。観測結果を物質波というモデルを通じて古典力学の運動に対応させているのである。このことで、古典力学で定義された時間と空間(距離)を使うことができるのである。量子力学で観測される現象と古典力学における現象が一般に同居することがないので、量子力学で使われる時間、長さ、運動量、エネルギーと言う言葉が古典力学におけるそれらと同じであるかという疑問を抱くことはないが、それらを疑ってみることも必要ではないだろうか。量子力学の理論がどのような論理の上に成り立っているのか知る上でも役立つものと思われる。

2018年11月10日土曜日

先達はあらまほしきことなり

 東京第一合成には渋柿の木があります。これで干し柿にしようと思いました。皮を剥いて吊るして乾燥させればよいと簡単に考えていました。100個を超える柿を吊るしました。青カビが生えます。全滅です。2年連続で失敗でした。
 今年はインターネットで調べました。皮を剥いたら熱湯に5秒位浸けたらいいと書いてありました。カビはほとんど生えません。おいしい干し柿になりました。
 やはり我流はだめだと思いいました。吉田兼好の徒然草にあります。「なにごとにも先達はあらまほしき事なり」

2018年11月8日木曜日

「時間」についての議論は今でも行われています

今さら「時間」について議論するなど時代遅れと思われるかもしれませんが、個人的には納得出来ないことがたくさんあります。測定のしかたによっていろいろな時間が定義され、それが物理の理論と関係してくると思うからです。雑誌「ニュートン」でもまた「時間」が取り上げられ、現在の視点で解説されています。

2018年10月31日水曜日

日本物理学会 秋季大会で発表 2018年9月11日


マイケルソン・モーリーの実験の論理的考察

 

      東京第一合成㈱      小竹秀典

    Logical Consideration of Michelson-Morley Experiment

            Tokyo Dai-ichi Gosei Co., Ltd.    H. Kotake

 

物理学史研究の役割の一つは物理学の思想の発展に光を当てることである。このことにより、「法則とは何か」ということについて回答が得られるかもしれない。

1687年にニュートンのプリンキピアが出版され、絶対空間と絶対時間を前提にした運動の法則が発見された。1905年にアインシュタインが特殊相対性理論を発表し、光速度不変のもと時間と空間の相対性が指摘された。マイケルソン・モーリーの実験はこの間の1887年に行われた。これは当時光の伝達媒体として存在が議論されていたエーテルが否定された実験と解釈されている。そしてこれが光速度不変を証明したと一般には言われている。

しかし光速度不変の原理はマイケルソン・モーリーの実験によって確かめられたと言うこと対して異論を述べている人もいる。この実験はあくまでも地球の進行方向に対する光の速度のずれを測定し、実験誤差範囲内では差が見られなかったことを示しているだけであり、「真空中の光の速度はすべての慣性系で同じである」などということを証明する実験結果ではないという見解である。アインシュタインはこの実験によらずに特殊相対性理論を確立したとも言われている。そのように考えると相対性理論とマイケルソン・モーリーの実験との関係は、後から関係付けられたものであるのかもしれない。

物理の観測(測定)というものは、よくわかっている類似現象と比較して把握することである。この観点からすると、ニュートンの運動の法則の発見は、物体の移動すべてを類似現象とみなし、「状態と変化を表す時間と空間を定義するもの」と言うことができる。(2016年、2017年で発表済)一方アインシュタインは観測においては光の伝達を基準にすることを述べている。その根拠とされる事実がマイケルソン・モーリーの実験であると一般には言われている。この論理に対して異論が出されているのである。光速度不変の検証は、他の実験と観測結果からもできる。マイケルソン・モーリーの実験は距離と時間を光で測定するということに意味があり、光を基準とした観測事例の代表と解釈できる。

アインシュタインの特殊相対性理論は、本当に実験事実を基にして考えられたのか、それとも理論を確立した後で、それから導かれる結果を検証しようとしたのかは今一度事実を見直し、確認したいところである。

2017年9月29日金曜日

日本物理学会 秋季大会で発表 2017年9月23日


   空間と時間の測定の論理に関する考察

 

      東京第一合成㈱      小竹秀典

    Logical Consideration of Measurement of Space and Time

            Tokyo Dai-ichi Gosei Co., Ltd.    H. Kotake

 

過去2回の発表で、ニュートンの運動の法則における時間と空間の定義とその測定方法を論理学的な面から述べてきた。その考えは次の記述の同じである。

学習院大学 田崎晴明教授は自身のホームページで次のように記述している。

等速度であるためには(1)物体の位置が等間隔で増加するとき(2)各位置を通過する時刻も等間隔で増加する必要がある。但し(3)これは慣性の法則による帰結ではなく(2)古典物理学における仮説にすぎない。

時間については古代ギリシャのプラトン、アリストテレスから現代物理学の創設者のニュートン、アインシュタインまで多くの哲学者や科学者の記述がある。しかし時間とは何か、時間をどう測るかの記述はあっても時計の正当性の理論的記述はあまり体系的には論じられていないような気がする。ニュートンやアインシュタインの理論に関する過去の記述でも、はじめに空間と時間というものがあって、すぐにその絶対性や相対性の議論になる。しかしまず最初に、空間や時間をどう測るかが重要で、それはそれらの定義そのものになる。

測定とはある現象を標準となる現象に対応させ比較することであり、再現性が必要になる。距離は運動する物体が移動する長さであり、その測定に使用するものさしは物体の運動と直接的に関連づけられる。それに対し時間を測る時計は、物体の運動との関連がわかりにくい。原子スペクトルの周波数を利用した原子時計は現在最も正確とされている時計であるが、原子の挙動が運動現象と同じであると考えると運動現象と関連させることができる。水晶振動子は機械的な運動ではなく周期的な電気振動を利用している。これも電子を物体と考えてその運動現象を利用していると考えることができる。

歴史的に古い水時計、砂時計、日時計は物体の落下や天体の運動から物理的(力学的)現象を利用していることが容易に理解できる。振り子時計、ぜんまい時計も同様に理解できる。これに対しランプ時計や火時計(ろうそくの燃焼)は運動と直接的に結び付けることは困難である。

ある状態が次の状態に変化する。その間に時間の概念が導入されるのであるが、その根本は標準となる現象との対応であると考えられる。そして変化を表現する最も簡単な数学的表現は線型数学である。

2016年12月31日土曜日

日本物理学会 2016年秋季大会で発表しました。領域「物理学史」。
「法則とは何か」をニュートンの運動の法則を例に挙げて論じています。


  ニュートンの運動の法則の論理に関する研究2

 

      東京第一合成㈱      小竹秀典

    Research for Logic of Newton’s Law of Motion 2

            Tokyo Dai-ichi Gosei Co., Ltd.    H. Kotake

 

 ニュートンの運動の法則の論理構成を歴史的な観点を考慮しながら見直している。その上で時間と空間の定義とその測定方法を論理学的に明確にしたい。

ニュートンの法則では、絶対空間と絶対時間の存在が前提とされている。この場合、時間と空間をどうやって測定するか、その測定方法は正しいのかが問われる。時間と空間(距離)の測定方法は歴史的な変遷がある。時間については、天体の運動(太陽と月、日時計)、機械式時計(砂時計、ぜんまい時計、水晶時計)、原子時計と変わってきた。使い勝手と正確性からの変遷である。これらの時計は手段であり、時間の定義そのものはニュートンの法則を成立させることである。言い換えると次のようになる。「時間と距離の測定方法そのものが時間と空間の定義である。その測定方法は、類似現象との対応である。」代表的な類似現象として等速度運動がある。そしてそれを基準として比較することが時間と空間の定義そのものになる。「時間と空間があって運動の法則が成立するというのではなく、運動の法則を成立させるものが時間と空間である。」と解釈する。

等速度運動は絶対空間と絶対時間のもとではその定義は明白である。しかしそれは現実に存在するのか。我々はどうやって等速度運動を認識するか、これが問題である。自然落下するエレベーターの中での等速度運動は地表面の人から見ると等速度運動ではない。何が絶対的な等速度運動かはわからない。存在するのは、複数の運動の比較だけである。

そうするとニュートンの運動の法則の論理構成は次のようになる。第1法則(運動の法則)は時間と空間の定義と解釈される。基準となる等速度運動と比較することにより別の運動を定量的に把握することができる。同様な考察から第2法則(運動の法則)は力と加速度の定義となる。そして同様に基準となる加速度運動と比較することにより、力と加速度の測定、定量的な把握が可能になる。

重力の定義も次のようになる。球形の地球の上にいる人間が地表を転がる物体(球)を等速度運動と認識し、その運動を時間と空間を測る基準とした場合、すべての物体は一定時間後には地球の中心に近づいて見える。これは重力とみなせる。即ち重力は論理的には、地球表面上で感じられる等速度運動を基準とした場合に生じる現象であり、導き出される結論ということになる。